Citadel

2023

ローマン・チタニウム・トラバーチン

180 × 74.6 × 50.5 cm

個人蔵。カリフォルニア州ポートラ・バレーの私有地に恒久設置

草地に立つ、ヨーコ・キューブリック作《Citadel》。ローマン・チタニウム・トラバーチンの彫刻。
写真:Mike James

「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。」

谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』(1933年)で語る美の捉え方が好きです。

はじめに、ベルギー産の黒大理石で《Citadel》の習作を制作しました。磨きすぎずに仕上げると、絹のような表面に深みと静けさが感じられます。その質感が好きで、この石でつくった作品の形も美しいと感じました。作品を大きくするときも、同じ黒い表面を生かしたいと思い、再びベルギー産の黒大理石を使うか、黒花崗岩を使うかと考えていました。

カッラーラの石材置き場を訪れたとき、とても美しいローマン・チタニウム・トラバーチンを見つけました。自然のままの美しさがあり、長い年月を感じさせる石でした。さまざまな茶色や銀色の層が幾重にも重なっています。天然の穴がたくさんあり、大きな穴の中をのぞくと結晶の構造が見えます。当初使おうと思っていた黒い石に比べると、やや荒々しく、整った均一な質感ではありませんでした。

大型の《Citadel》を制作するのに十分な大きさの、ローマン・チタニウム・トラバーチンの原石を確保できました。最初の習作と同じ形でも、トラバーチンでつくると彫刻の印象は大きく変わります。黒い石では静かで内にこもるような印象でしたが、トラバーチンでは、より大地を感じさせるものになりました。まるで地中から掘り出された彫刻のようで、古代と未来が重なっているようにも感じます。仕上がりがとても気に入りました。天然のくぼみは埋めずに残しました。

《Citadel》をポートラ・バレーの私有地の屋外に恒久設置した後、嵐がありました。その風が小さな種を隙間に運んだのでしょう。いくつかの穴に、小さな植物が根を張り始めました。ある暗く不規則なくぼみからは、緑の茎が伸びてきました。石の一部として残した空洞が、周囲の風景を彫刻の中に取り込む小さな場所になったのです。

《Citadel》のトラバーチンの天然のくぼみから育つ、小さな緑の植物。
写真:Yoko Kubrick

「家に帰ると、まず目に入るのが《Citadel》です。オークの木々に囲まれ、大きな峡谷と遠くの丘を背景に立っています。天然石に、人の創造力と手仕事で形を与えた彫刻です。この作品を見ると、芸術や美意識が周囲の環境と一体になった場所へ帰ってきたのだと感じます。

壁に掛けたりテーブルに置いたりする作品以上に、大型の彫刻は周囲の空間と関わり、その空間を変え、豊かにします。《Citadel》を自宅に迎えたことで、彫刻がもつ力を新たに知り、自分たちの暮らす場所のよさを以前よりも深く感じるようになりました。」

ポートラ・バレーの個人コレクター
制作ノート(英語)作品一覧に戻る お問い合わせ

Yoko Kubrick

Represented By

  • Pamela Walsh Gallery, Palo Alto
  • Rosenbaum Contemporary, Palm Beach
  • Melissa Morgan Fine Art, Palm Desert

お知らせ

展覧会と新作のお知らせをメールでお送りします。

いつでも配信停止できます。お問い合わせ情報が自動的に登録されることはありません。

© 2026 Yoko Kubrick. All rights reserved.